第三十九話 正社員25歳 真央の場合

倒錯した性癖を持つものは少なくない。
その最たる例が露出であろう。
とある夜、その女は突如男のTEL番号に電話をかけた。
戸惑う男に対して突きつけたのは自身の秘所を弄る音。
ぐちゅぐちゅと濡れた性器を弄る音を男に聴かせ、女は興奮しているようであった。
「声と音だけで興奮するとは変態だな」
そんな男の蔑むような言葉にすら興奮を覚える変態女。
彼女は自身の乳房と性器を差し出し、男になぶられる事を求める真正のマゾヒストなのであった。

これはある日の夜、たまたまスマートフォンにかかってきた間違い電話から始まる物語だ。

「はい、もしもし」

「……」

 荒い息遣いを不審に思いつつ、何度ももしもしと声をかけていたら若い女性の声で最寄り駅の公衆トイレからかけているという言葉が聞こえてきました。

「……あの、何の用ですか」

「っふ、わかり、ませんか?」

ぐちゅぐちゅといった音からして察することはできるけれど、信じたくなかった。

この女性は今、(誰と間違えているか知らないが)俺に電話をかけながら公衆トイレでオナニーをしている。

 ならばと若い女の小さな喘ぎ声をオカズに俺もオナニーをしてやろうと思い、ズボンをずり下げてかたく勃ったちんこを取り出してごしごしとこすってみた。

「どうなんだよ、濡れてんのか?」

「……濡れて、ます、はしたない蜜液が漏れて、その……男の魔羅を欲しがっています……」

 言い回しが少し古臭い女はそれでもぐちゅぐちゅと電話越しでも音がわかるくらいオナニーを繰り返しているようで、俺も負けじと手のひらに唾を吐きかけて音が鳴るように湿らせて上下にしごき、状況を伝える。

「こっちはあんたの濡れマンコに突っ込みたくてウズウズしてる、今からそっちに行ってもいいか?」

「ぁ、だめ、ですっ……!このまま、繋いでて……」

 なぜそこまでしてオナニーだけにこだわるのか俺にはわからなかったが、その時は多分見た目に自信のない女が露出狂のように自分のオナニーを聞いててほしかったんだろうと思うことにして、わざとらしい音を立てたオナニーを続けていた。

「っぁ、ぁあっ……」

「イッたのか?」

「あなたの声と、音が……よくて、イッちゃい、ました」

「声と音だけでイクのか……変態だな」

 俺の方も興奮してしまって、鈴口からどろどろと先走りを垂らしながらオナニーをしていたもので、そろそろイキそうだというのに手の届く範囲にティッシュがないことに気がついた。

「くそ、ティッシュがない……!」

「あの、私が口で受け止めるイメージで手の中に出したらどうです、か?」

「……そうだな、それしかないか……」

 手を洗うのは面倒だが、仕方ない。

 音を立てながらしごいていたのを一旦やめて先端を包むように手で覆ってイメージで電話越しの女がぱくりと亀頭を口に含んでちろちろと鈴口を舐めるイメージをして、とぷりと手の中に射精した。

 はぁはぁと息を整えながら女に出したことを伝えると、どこか嬉しそうな口調でよかったと呟いたのが聞こえてきた。

「……で、あんたはなにがしたくてこんな電話をかけてきたんだ」

「その、たまたまムラッとして、オナニーしようとして多目的トイレに入ったら壁に小さく電話番号が書いてあって……」

 確か、その多目的トイレの壁に小さく電話番号を書いた記憶はある、だがそれが消されないまま放置されていてオナニーのために入ってきた女から電話をかけられるとは思わなかった。

「こんなの、初めてしましたけど……あなたの声と煽り方が上手くて……」

 また相手をしてくれますか? と言ってきた女に頷いたものの、今度は電話ではなく対面で会ってセックスするなら時々電話越しのオナニーを了承すると言ったら、女性は恥ずかしそうにわかりましたとだけ言って電話を切ってしまった。

 俺はその場で電話帳に女の電話番号を登録して、無理やり取りつけたセックスの予定をスケジュールに入れた。

 明日の午後八時に最寄り駅の多目的トイレ前集合、セックスはコンドーム付けて一回だけと制約の多いものだが仕方ない。

 明日が楽しみだと思いつつ、立ち上がって萎えたちんこをぶら下げながらティッシュ探しに部屋をうろつく。

 ……そういえぱコンドームを切らしていた。

 明日の集合時間前に買えばいいかと思い、ティッシュを一枚手に取った。